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男子高生が英語を苦手とする理由(2)

3. 学校英語の課題

男子進学校における英語指導は、暗記を重視した「受験英語」が主流となっており、実際に使える「生きた英語」を学ぶ機会が極めて限られています。この試験偏重の指導方針は、生徒にとって英語が単なる「受験のための科目」として認識される要因となり、英語を実際に使ってコミュニケーションを取る楽しさや有用性を感じにくくさせています。さらに、日常生活や将来のキャリアで必要とされる「使える英語」への意識が薄れる結果、学習意欲の低下や苦手意識の定着に繋がっているのが現状です。

3.1 文法と和訳の暗記に偏重

男子進学校では、英語を「試験科目」として捉えた指導が行われがちで、文法や和訳の暗記が受験対策の一環として重視されています。このような指導は、文法を細かく解説し、構文解析を通じて和訳を暗記させるものが中心で、特に細部の精度が求められる試験に適応することが目的となります。しかし、この方法では英語を「実用的なコミュニケーションの手段」として活用する力が育ちにくく、生徒は英語を「使う言語」として捉えられません。結果として、試験に向けて暗記した内容が、実際の生活や仕事で役立たないケースが多く、実生活での英語活用に自信を持てないまま学習を進めることが多く見られます。

3.2 「話す・聞く」スキルの軽視

日本の学校教育全体がリーディングやライティングに偏っており、スピーキングやリスニングに力を入れる時間が非常に限られています。特に男子進学校では、英語の「実用性」よりも「試験での点数向上」に焦点が当てられるため、話す力や聞く力の重要性が軽視されがちです。ベネッセの調査でも、生徒の70%以上が「英語は試験のための科目」と捉えており、実用的なコミュニケーションスキルの重要性を感じていないことが明らかになっています。このような状況では、生徒たちは実社会で英語を使う際に戸惑うことが多く、英語で会話する自信を持ちにくくなります。

3.3 実践の機会不足によるモチベーションの低下

男子進学校では、英語が「実際に使う言語」としての位置づけが薄く、試験科目として捉えられています。そのため、英語を話したり、実際に使用してみたいという動機が生徒の間で生まれにくくなり、学習意欲の低下に繋がっています。また、実際に使ってみることで自信を持つことができないため、英語を使うことへの不安が残り、さらにモチベーションを下げる結果となっています。特に男子校の環境では、異文化交流の機会も少なく、英語を実践的に使う場面が限られているため、「英語を話すことが面白い」「新しい言語を使ってみたい」という好奇心が育ちにくい傾向にあります。

3.4 コミュニケーションスキルの重要性が伝わりにくい

文法や和訳の暗記に多くの時間が費やされることで、英語を使ったコミュニケーションに必要なスキルの重要性が生徒に伝わりにくくなっています。この指導方法では、生徒たちは単に「正しい答えを覚えること」が重要と感じてしまい、英語を使って相手と意思疎通を図ることの楽しさや難しさを体感する機会がほとんどありません。その結果、将来にわたって「話せる英語」を意識できないまま学習が進み、社会に出てからの英語使用に対する苦手意識がさらに強まってしまうことが多々あります。また、社会で求められる実際の英会話スキルのギャップに直面しやすく、英語を「試験のためだけのツール」として学んでしまったことへの後悔を持つ卒業生も少なくありません。

4. 塾・予備校における英語学習の課題

塾や予備校での英語学習は、従来型の受験指導が中心で、実際の英語運用力や自己表現力を育てるための指導が不足している現状があります。このような課題は、男子生徒に限ったものではなく、女子生徒にも共通して見られる問題です。以下に、具体的な課題を挙げます。

4.1 英文解釈中心の受動的な学習

多くの塾や予備校では、「英文解釈」に偏った指導が行われており、SVOCなどの構造解説が中心です。これは生徒に受け身の姿勢を定着させ、英語を使って自分の意見や考えを表現する「アウトプット」の機会を制限しています。こうした受動的な学習は、生徒の英語運用力の向上を妨げる要因となっています。

4.2 英作文における自由な表現が評価されない指導

塾の英作文指導では、模範解答を重視し、「正解」を一つに決めることで、生徒の自由な表現や発想が制限されることが多く見られます。この指導は英作文に対する苦手意識を強めるだけでなく、生徒が自分の表現力や文法構成を磨く機会を減らしてしまいます。英作文の習得には、自分で書き、添削を受けてブラッシュアップするプロセスが必要であり、模範解答の理解だけでは自らの表現力は十分に育まれません。

4.3 和訳中心の指導による「返り読み」の定着

和訳に偏重する指導によって、英文をそのまま理解する力が養われず、日本語訳を通して内容を解釈する「返り読み」の癖が定着しやすくなります。この習慣は、読解スピードを遅くする原因となり、基準とされるWPM(Words Per Minute)160前後の読解速度に達しにくいといった弊害をもたらします。また、英語をそのまま理解しようとする姿勢が培われないため、効率的な読解力がつきにくくなります。

4.4 長文読解力の不足

和訳や文法解析に偏る指導が、大学入試で求められる長文速読力や全体把握力の不足につながっています。大学入試では長文を一度で速やかに読解し、内容を正確に把握することが求められますが、従来の塾・予備校の指導がこうした能力の育成に必ずしも適していないのが実情です。

4.5 理解度の確認が不十分

英語は数学や理科と異なり、自分の解答が正確かを自力で判断しにくい科目であり、特に塾や予備校の指導においては、生徒の理解度を十分に確認するためのフィードバックが不足していることが多くあります。この欠点により、誤解が解消されないまま知識が定着するリスクが高まり、記述問題を含む国公立大学の入試で対応力を発揮できない要因ともなります。特に答案作成後の指摘や修正の経験は、生徒の表現力や理解力を深めるために欠かせない要素です。